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都々逸

元来は、三味線と共に歌われる俗曲で、音曲師が寄席や座敷などで演じる出し物であった。
主として男女の恋愛を題材として扱ったため情歌とも呼ばれる。
七・七・七・五の音数律に従うのが基本だが、五字冠りと呼ばれる五・七・七・七・五という形式もある。
  1. 惚れて通えば 千里も一里 逢えずに帰れば また千里(作者不詳)
  2. 三千世界の 鴉を殺し ぬしと朝寝(添い寝)が してみたい(桂小五郎作、高杉晋作作等、諸説あり)
  3. 立てば芍薬 坐れば牡丹 歩く姿は 百合の花(作者不詳)
  4. 逢うて別れて 別れて逢うて(泣くも笑うもあとやさき) 末は野の風 秋の風 一期一会の 別れかな(井伊直弼 茶湯一会集)
  5. 岡惚れ三年 本惚れ三月 思い遂げたは 三分間(作者不詳)
  6. 戀という字を 分析すれば 愛し愛しと いう心(作者不詳、戀<恋の旧字体>の書き方を歌ったもの)
  7. 恋し恋しと 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が 身を焦がす(作者不詳)
  8. 人の恋路を 邪魔する奴は 馬に蹴られて 死んじまえ(作者不詳)
  9. 夢に見るよじゃ 惚れよが薄い 真に惚れれば 眠られぬ(作者不詳)
  10. 頭禿げても浮気はやまぬ 止まぬはずだよ先がない(齋藤緑雨)
  11. 散切り頭を叩いて見れば、文明開化の音がする
五字冠りの例
  1. 今日の空 花か紅葉か知らないけれど 風に吹かれて行くわいな(都々逸坊扇歌)
  2. この酒を 止めちゃ嫌だよ 酔わせておくれ まさか素面じゃ 言いにくい(作者不詳)
  3. 浮名立ちゃ それも困るが 世間の人に 知らせないのも 惜しい仲(作者不詳)
  4. あの人の どこがいいかと 尋ねる人に どこが悪いと 問い返す(作者不詳)
  5. 世の人は 我を何とも笑わば笑え 我なす事は 我のみぞ知る(坂本龍馬)
その他の作品
  1. 泣かせるばかりの空さえ晴れて 今宵は逢えそなまるい月
  2. 見送る松原遠のく姿 背延びする目にかかる霧
  3. 泣いて別れたまる一年の 秋がまた来て泣かす虫
  4. 土手に並んで行く方二つ 薄(すすき)が呼んでる月灯り
  5. とめる実意をふりきる不実 傘も持たずに濡れて行く
  6. 草と寝て露に濡れてる 果報を持って何が不足で虫は鳴く
  7. すだく虫の音 薄(すすき)の影に月をあびてる肩二つ
  8. おぼろ月夜に寄添う二人 かすむ篝(かがり)に恋がうく
  9. うちとけた心も一緒に 空まで晴れて今朝の青葉の冴えた色
  10. 月の薄(すすき)の穂にからませて 露に濡れてる立話
  11. 世間へたてつく小さな意地が ほろりとけそな秋の夜
  1. あの人のどこがいいかと尋ねる人に どこが悪いと問い返す
  2. 雨の降るほど噂はあれど ただの一度も濡れはせぬ
  3. 嫌なお方の親切よりも 好いたお方の無理が良い
  4. 色はよけれど深山の紅葉 あきという字が気にかかる
  5. 井戸の蛙が空うち眺め 四角なものだと議論する
  6. 今さら苦労で痩せたと言えぬ 命までもと言った口
  7. うちの亭主とこたつの柱 なくてならぬがあって邪魔
  8. 浮気うぐいす梅をばじらし わざととなりの桃に鳴く
  9. 上を思えば限りがないと 下を見て咲く百合の花
  10. 浮き名高砂むかしとなりて 今じゃ互いに共白髪
  11. お前死んでも寺へはやらぬ 焼いて粉にして酒で飲む
  12. 遅い帰りをかれこれ言わぬ 女房の笑顔の気味悪さ
  13. おろすわさびと恋路の意見 きけばきくほど涙出る
  14. 面白いときゃお前とふたり 苦労するときゃわしゃひとり
  15. おまはんの心ひとつでこの剃刀が 喉へ行くやら眉へやら
  16. 岡惚れしたのは私が先よ 手出ししたのは主が先
  17. 重くなるとも持つ手は二人 傘に降れ降れ夜の雪
  18. 切れてくれなら切れてもやろう 逢わぬ昔にして返せ
  19. 金の屏風に墨絵の牡丹 中に二人の狂い獅子
  20. 義理や人情が守れるならば 恋は思案の外じゃない
  21. 口でけなして心で褒めて 人目しのんで見る写真
  22. くじも当たらす出世もなくて 今日を生きてる運のよさ
  23. けんかしたときこの子をごらん 仲のよいとき出来た子だ
  24. こうしてこうすりゃこうなるものと 知りつつこうしてこうなった
  25. この雪によく来たものと互いに積もる 思いの深さを差してみる
  26. 拒む気はない一言馬鹿と 肩へ廻した手を叱る
  27. 察しておくれよ花ならつぼみ 咲かぬところに味がある
  28. 寒さしのげぬあばら屋なれど 酔うて眠れば玉の床
  29. 白だ黒だとけんかはおよし 白という字も墨で書く
  30. すねてかたよる布団のはずれ 惚れた方から機嫌とる
  31. 高砂祝って誓った初夜が 婆と爺とになる門出
  32. たんと売れても売れない日でも 同じ機嫌の風車
  33. ちらりちらりと降る雪さえも 積もり積もりて深くなる
  34. 積もる思いにいつしか門の 雪が隠した下駄の跡
  35. どうせ互いの身は錆び刀 切るに切られぬくされ縁
  36. ながい話をつづめていへば 光源氏が生きて死ぬ
  37. 庭の松虫音(ね)をとめてさえ もしや来たかと胸さわぎ
  38. 一人笑うて暮らそうよりも 二人涙で暮らしたい
  39. ひとりで差したるから傘なれば 片袖濡れよう筈がない
  40. 惚れた数からふられた数を 引けば女房が残るだけ
  41. ほれた証拠はお前の癖が いつか私のくせになる
  42. 枕出せとはつれない言葉 そばにある膝知りながら
  43. ままよままよと半年暮らす あとの半年寝て暮らす
  44. 丸い玉子も切りよで四角 ものも言いようで角がたつ
  45. 昔馴染みとつまずく石は 憎いながらもあとを見る
  46. わけりゃ二つの朝顔なれど 一つにからんで花が咲く
  47. 九尺二間に過ぎたるものは 紅のついたる火吹き竹 (九尺二間=粗末な狭い住居)
  48. このまま死んでもいい極楽の 夢を埋める雨の音
  49. 末はたもとを絞ると知らで 濡れてみたさの 春の雨
  50. 土手の芝 人に踏まれて一度は枯れる 露の情けで よみがえる
  51. 何をくよくよ川端柳 水の流れを見て暮らす
  52. 長い着物を短く着ても 心で錦の綾を織る
  53. ぬしによう似たやや子を生んで 川という字に寝てみたい
  54. 野辺の若草 摘み捨てられて 土に思いの根を残す
  55. 薔薇も牡丹も枯れれば一つ 花でありゃこそ 分け隔て
柳家三亀松(やなぎや みきまつ、1901 - 1968)